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日本における外国人女性のDv問題

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Submitted By darlene469
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日本における外国人女性のDV問題

2012・06・02

修士二年 崔 麗娜

1.はじめに

配偶者間暴力というのは、親密な関係にある男女間、すなわち,夫婦、同棲中のカップルなどで生じた暴力をさす。『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律』(2001年制定;2004年第一次改正;2007年第二次改正)第一条一項:この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいい、配偶者からの身体に対する暴力などを受けた後に、そのものが離婚をし、又はそのこんいんが 取り消された場合にあっては、当該配偶者であったものから引き継き受ける身体に対する暴力などを含むものとする。

配偶者間暴力は、家庭内暴力(Domestic Violence,以下DVと省略する)の一つとされ、1900年代になって、欧米で注目されるようになり、そこでは、夫から妻への暴力を女性に対する人権侵害として問題視した。1993年、国連総会において、この問題について議論し、「女性に対する暴力撤廃宣言」の中で、夫の家庭における暴力を人権侵害として明確に規定した。1995年の北京世界女性会議で採択された「北京宣言・行動綱領」では、DVを防止し根絶するために総合的な対策をとることが政府に求められた。

2000年2月に、初めての国によるDV実態調査である『男女間における暴力に関する調査』で明らかになったのは、日本でも、20人に1人の女性が命の危険を感じるほどの暴行を受けている事実であった。
活発な民間活動、日本社会にDVが蔓延している調査結果、そして国際的圧力により、2001年4月に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」成立し、2002年4月に施行となった。三年後の見直しが法内で規定されていたため、2004年6月には、改正法「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が公布され、同年12月に改正法施行となった。2回目の改正は2007年7月11日公布され、2008年1月11日の施行となった。

日本に在住する外国人のDVは、婚姻などで日本へ定住する外国人女性が、夫の母国において言葉を含め文化的、経済的、社会的な力関係でも弱い立場におかれ、法律的に夫に付随する「在留資格(いわゆるビザ)」において日本人女性よりもさらに弱者となる傾向が見られる。それが外国人女性へのDVの特徴である。

本文では、特に在日外国人女性のDV被害に対する社会的資源に焦点を当て、在日外国人女性のDVに対応する社会的資源は、在日外国人女性にとって、使いやすいか、使いづらいか、それらの社会的資源の周知、アクセスは簡便か、「女性」の外国人がかかえる特有の問題に配慮しているかなどについて考察を行うことにする。

2.在日外国人女性の人口統計

在日外国人女性のDV被害に対する社会的サポート体制の構築、広域的・包括的な施策のためには、在日外国人の人口についての基本的な知識・情報が必要であり、全国的な在日外国人の現状を示す指標が必要不可欠である。
そこでここでは、人の国際化の現状、結婚、離婚等に関する統計から分析する。

1)総人口割合
法務省入国管理局の統計によると、2010年の外国人入国者数は、大幅に増え、2009年比24.6%増の944万3696人となった。 2010年の外国人登録者数は、不況の深刻化で、2009年比2.4%減の213万4151人、総人口に占める割合も1.67%に縮小した。外国人登録者数の最も多い都道府県は、東京都で418,012人、大阪府206,951人、愛知県204,836人である。

日本で外国人登録令が初めて施行された1947 年の外国人登録者数は、639,368人であった。1950 年降10 年毎の増加数をみると、1950 年~1960 年51,870 人、1960 年~1970 年57,892 人、1970 年~1980年74,452 人、1980 年~1990 年292,407人、1990 年~2000 年611,127 人である。1990 年以降の外国人登録者人口の増加が著しいが、一方「韓国・朝鮮」国籍(出身地)は1991 年以降、年間約1 万人
減少し続けている。

2)男女別人口割合
2010年男女別外国人登録者を見ると、外国人男性972,481人、女性は1,161,670人で女性が男性を上回っている。

3)国籍(出身地)別割合
1950 年から1970 年の外国人登録者の構成員は、9割が戦前から居住する韓国・朝鮮、中国人であった。1980 年代後半以降、東南アジア、南米出身の外国人人口が急増し、2010年、在日韓国・朝鮮人の人口構成割合は約3割まで、減少した。国籍(出身地)別外国人登録者数は第1位「中国」687,156人、第2位「韓国・朝鮮」565,989人、第3 位「ブラジル」230,552 人、第4 位「フィリピン」210,181人、第5 位「ペルー」54,636 人である。この5 カ国で8割以上を占める。女性人口割合では、総数に比べフィリピン女性の人口比が女性14.3%と総数の9.1%より多くなっている。1990 年以降の女性人口は、1990 年536,552 人から、2010 年1,161,670人と約2倍に増加している。特に、中国人女性の増加がめざましい。

4)在留資格別割合
2010 年の在留資格別、外国人登録者数をみると、「永住者」が565,089人、次に「特別永住者」399,106人、「留学」201,511人、「日本人の配偶者」196,248人、「定住者」194,602人となっている。

5)オーバースティ外国人女性人口
2011年1月1日現在の不法残留者数は、入国審査の厳格化、関係機関との密接な連携による入管法違反外国人の集中摘発の実施等総合的な不法滞在者対策により、前年比14.5%減の7万8488人となった。不法滞在者の24.6%が韓国人であり、毎年最も多い不法滞在外国人となっている。(統計は外国人が提出する入国記録、出国記録を電算処理して得た数であるため、正確に表すものとは言い難いが概数を示しているものである)。
1990 年7 月からの推移をみると、1990 年の総数は106,497 人、女性は39,646(37.2%)であった。翌年から倍増し、1993 年5月には106,532 人となった。その後、12 万人前後の人口で推移し1997 年の127,047 人をピークに年々減少傾向にあるも1993 年以降、10 万人の人口を保っている。オーバースティ女性が10 万人以上、約10 年にわたって日本に暮し、定住化傾向を示している。

6)国際結婚・国際離婚 「国際結婚」をするカップルの性別における特徴についてみると、1970年代半ばまでは、国際結婚は件数そのものが少ない上に、「妻が日本人で、夫が外国人」の比率が「夫が日本人で、妻が外国人」より高かった。そして、少しずつ「夫が日本人で、妻が外国人」の比率が増加していき、1976年について「妻が日本人で、夫が外国人」よりおおくなる。その後、比率の差は拡大して、「妻が日本人で夫が外国人」は1998年に1%台に乗ってからほぼ同じ水準で推移し2009年1.1%(7,646件)の比率にとどまっているのに対し、「夫が日本人で、妻が外国人」は1985年に1%を越え、最高時の2006年には4.9%(35,993件)に達し、2009年は3.8%(26,747件)となった。(厚生労働省人口動態統計2010)

その中で、夫妻の国籍別に見ると、日本人と中国人との婚姻件数が非常に多くかつ急増している。厚生労働省人口動態統計によれば、日本人夫と中国人妻の結婚件数は1986年の1,841件で、2001年には最高値の13,936件に達し、2009年には12,733件であった。又、国籍別の離婚件数の動態をみると、日本人夫と中国人妻の離婚件数は2009年度には5,814件でその最高値に達し、日本人夫と外国人妻の離婚件総数(2009年、15,570件)の3分の一程度を占めることとなった。

7)配偶者による殺人・傷害
警察庁平成22年の統計によれば、殺人、傷害、暴行などの検挙件数3159件(女性被害者2927件,92.7%)で、そのなか、殺人114件62.0%、傷害1437件94.4%、暴行1376件94.8%である。
他にも、配偶者暴力相談支援センターなどへの相談件数、婦人相談所入所理由、シェルター設置状況、DV暴力を理由とした婚姻件数などの各方面からの統計データや状況分析からでも、女性へのDVが深刻されていることがわかる。

配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数

資料出所:内閣府調べ
(備考)
平成23 年4 月現在、全国の支援センターの数は201 か所(うち市町村の支援センターは28 か所)となっている。

3.外国人女性のDV被害状況

内閣府男女共同参画局では、DVの種類として、身体的・言語的・心理的(精神的)・性的・社会的・経済的及びストーキングを挙げている。

2010年男女平等参画白書によれば、DV被害者が、相手と離れて生活を始めるときの困難は様々な方面から受けているが、主に経済的困難が54.9%、身体及び心理的が52.9%、手続きのことが52.6%を占めてある。

外国人女性に対する暴力の場合には、身体的、精神的、性的、経済的暴力など、日本人女性の経験と共通する暴力のほか、在留資格などの不安定な法的地位を利用した暴力(ビザの手続きに協力しない、オーバスティの状態に放置する)、文化社会的偏見に基づく暴力など、移住女性に特有な暴力が加える。また、命の危険にさらされるほどの酷い暴力を振るわれても、帰国させられるのではないかという恐怖から助けを求めることができないなど、暴力が潜在化し易く、被害の実態が深刻である。

外国人が日本に合法滞在するには、法的婚姻とは別に日本で生活するための「日本人配偶者」という在留資格が必要であり、在留期限は最初1年間を2回更新、安定した夫婦には更に3年間、その後5年目になってやっと「永住者」の在留資格を取得できる。永住者になれば離婚しても日本に住み続けられる。もしそれ以前に離婚し「日本国籍の子の親権者」なら「定住者」に在留資格変更をする。しかし「日本国籍の子」がいない、または親権者でない場合には在留資格を喪失する。そこで、外国人女性は在留資格更新には夫の協力が不可欠、子どもと引き離されるという恐怖から、DVを耐え忍ぶという悲劇も生まれる。

このように深刻な被害をうけていながら、支援情報や関係機関へのアクセスが難しいこと、在留資格による諸支援制度の適用制限などから、外国人移住女性被害者は事実上、公的救済の枠外に置き去りにされてきた。特に、在留資格のない被害女性のおかれた状況は、改正DV法施行後も変わらず過酷である。

4. DV防止法に関連した問題点

2001 年10 月の施行、2002 年4月からのDV法により各自治体でDV相談窓口=配偶者暴力相談支援センターが定められ、国籍や在留資格に関係なく相談をうけ、必要に応じて公立、民間のシェルターで緊急一時保護を行う。

頼る家族や友人がなく福祉の情報の入りにくい外国人にとって相談窓口を知ることは、身体に危険が及ぶか否かによらず、被害を防止または最小限にとどめる点で重要である。もしDVの疑いや家族関係について悩む様子に気づいたら、被害者本人に「DVは自分が悪いのではない、暴力は犯罪であり、相談する場所がある」ことを知らせる必要がある。夫やその関係者が同行する場合、彼らが同席していない場面を見つけ、被害者の母国語のDVに関するパンフレットや相談電話番号を渡すことは支援の糸口になる。「帰宅すると危険がある」「居所がない」場合には、医療機関が本人とともに緊急一時保護の相談をすることもできる。相談窓口には守秘義務があり安全が確保される。その他保護命令や自立への生活保護、母子支援(母国の福祉が乏しい場合特に説明を要する)、離婚や在留許可などの法律相談と必要な段階に応じて継続して支援の手がさしのべられる。

しかし外国人に対するDV法は、まだまだ充分に機能しているとはいえないし、DV防止法に関連した課題・問題点をいろいろ存在する。

* 遠方にある:
公的支援サポートセンターが、都道府県に1ヶ所しかなく近隣でなければ遠方になるため緊急避難が困難な場合が多い。

②サポートセンターの再利用が不可能な点:
一担夫の元へもどってしまうと、次に更に深刻な事態になってもセンターは利用できない。民間施設が対応する以外にない。

③子どもへの配慮がない:
接見禁止等の法の定めにも、配偶者が子どもに会うことを禁止しておらず、種々な手段を使って子どもを略奪することも可能である。
④サポートセンター2週間の滞在では方針が立たない:
サポートセンターの入所2週間では、具体的支援のための方針を決定、実現するには困難である。また、退所後のサポート体制が薄く、自分でアパートを捜すことは特に外国人の女性では不可能に近い。

DV法に関連し、警察庁H20 年1月11日通達や入国管理局への法務省H20年7月10日通達では、被害に関する相談や被害者の在留資格には事情を配慮するように記されている。在留資格に問題(超過滞在や在留資格更新時期など)を有する被害者は、まず自治体DV相談窓口の相談員が被害者のDVに関する真の事情を聴取し、DV証明書(内閣府H20年5月9日通知)などを使い段階を経て総合的に問題解決することを勧める。DV法の目指すものは、被害者に在留資格を問わない福祉、医療制度(日本国籍の子への支援制度等も含め)を利用し被害からの回復と人生の再出発を支援することである。

5. アメリカの法的サポートの紹介

①加害者が配偶者のみに限定されない。家族、及び同居者、そして法的根拠のない恋人も含まれ、加害者との関係が過去のものでも、また加害者が未成年でも有効である。

②夜間、休日など裁判所が開いていない時間帯に警察へ訴えれば、そこからその日の時間外担当の裁判官の自宅へ連絡が入り、裁判官は口頭で保護命令の申請を許可することができる。それは24 時間有効となっており、被害者は翌日裁判所にて、正規の手続きをすることができる。

③通常の保護命令は裁判所へ行き申請するが、被害者本人の供述書は、本人の署名は必要だが公証人の面前で宣誓したものである必要はない。裁判官はそれを読み、特に問題がなければまず休・祝日を除く10 日間の保護命令を発行する。その間に加害者へ保護命令の告知をするが、これは必ず警察官が本人に直接手渡しすることになっている。加害者は10 日後の指定された期日に裁判所へ出頭し、不服があれば申し立てをすることができる。そ¥れが認められない場合、または加害者が出頭しない場合は、その後1年間期間を延長される。1年後またもう1年と更新することができ、さらに、本当に危険であると認められた場合には、その有効期間を無期限にすることもできる(永久保護命令)。

④保護命令の内容は、申請した被害者に危害を加えない、一定の距離以上接近することを禁じるなどのほか、申請者の自宅や勤務先、学校など、特定の場所に近づくことや、電話や手紙などの間接的な接触も禁ずることができる。また、同居している場合の退去命令の最長期間は1 年間である。

⑤申請者に子どもがいる場合は、その子どもも保護の対象に加えることができ、一時的にその子どもの親権を申請者に与えることができる。

⑥保護命令は民法であるため、その命令を遵守していれば加害者が法を犯したことにはならないが、もし保護命令が発行されているにもかかわらず、申請者に近づこうとするなど、保護命令に記載されている内容に違反した場合は刑法扱いになり、加害者は逮捕され、刑法のもとに処罰される。

他にも、米国には、VAWA(Violence Against Women Act)という、DV や性暴力などから女性を保護するための法令があるが、それには、米国人と結婚したばかりで永住権を取得していない外国人女性を保護するものも含まれる。たとえば、外国人女性が米国人と結婚すると、その女性は配偶者である米国人がスポンサー(受け入れ責任者)となり、永住権を申請することができる。

通常はその結婚が偽装ではないことを確認するため、2年ほどの一時的永住許可が発行され、その後再び配偶者とともに移民局へ出頭し、結婚生活が継続されていることを証明して初めて本格的に永住権を取得できるシステムになっている。つまり、その期間中に別居または離婚をした場合は、そもそもの永住権申請の事由が消滅したものとみなされ、その女性は永住権申請の資格を失うこととなる。

しかし、それが配偶者からDV の被害を受けたことが原因である場合は、その女性は、スポンサーである配偶者に頼ることなく、本人がスポンサーとなり永住権を申請することができる。また、その女性に子どもがいる場合は、その子どもも永住権を申請することができる。

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